Sports Car 人馬一体ミュージアム
ー「気持ちいい」は、デザインできる ー
広島県安芸高田市に2026年8月23日、プレオープンした
「Sports Car 人馬一体 Museum」へ。

場所は、2020年に閉校した旧・来原小学校。
校舎へ入ると、そこに並んでいるのは、かつての机や教材ではなくスポーツカー。
「小学校」と「スポーツカー」。
本来なら結びつかない二つが一緒になっている。
しかし今回、クルマそのもの以上に興味を持ったのが、この施設の名前にもなっている
「人馬一体」という言葉だった。


ー「人馬一体」とは何だろう。ー
人と馬が一つになったように動く。
マツダ・ロードスターを象徴する考え方として知られる「人馬一体」。
ハンドルを切れば、思ったところへ曲がる。
アクセルを踏めば、思ったように加速する。
ブレーキを踏めば、思ったように減速する。
数字で表せる最高速度や馬力とは少し違う。
重要なのは、
「人がどう感じるか」ということ。
マツダ自身も、人馬一体を人間中心のクルマづくりにつながる考え方として展開している。
つまり、クルマだけを設計しているのではない。
クルマを操作したときの「人の感覚」まで設計している。

ー クルマだけでなく「つくった人」を残すー
このミュージアムでもう一つ印象的なのが、クルマだけを保存しているわけではないこと。
初代ロードスターの開発主査を務めた平井敏彦氏の功績を紹介するコーナーが設けられている。
さらに館長を務めるのは、RX-7やロードスターの開発に携わり、2代目・3代目ロードスターの開発主査を務めた貴島孝雄氏。
ここに、このミュージアムの特徴があるように思う。
通常、自動車博物館で残されるのは「完成したクルマ」。
しかし、クルマは突然生まれたわけではない。
「こんなクルマをつくりたい。」
「運転する人に、こう感じてもらいたい。」
そんな開発者の思想があり、その結果として一台のクルマが生まれる。
完成品だけでは、その思想までは残らない。
だから、クルマと一緒に「つくった人の志」も残す。
モノを保存するだけではなく、モノの背景にある思想を次の世代へ伝える。
これもミュージアムの重要な役割なのだと思う。
ー マツダだけではないところも面白い ー




「人馬一体」と聞くと、ロードスターやマツダの施設を想像する。
しかし館内には、マツダ車だけが並んでいるわけではない。
入口ではマツダ R360クーペとトヨタ スポーツ800、通称「ヨタハチ」が並ぶ。
さらに、トヨタの協力によって、映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』で実際に使用されたGRスープラ。撮影で使われた痕跡まで残る、本物の劇中車を間近で見ることができる。
また、WRCを戦うGRヤリス Rally1につながるヤリスWRCやSUPER GT GT500クラスを戦ったENEOSカラーのレクサス SC430なども展示されている。
ー デザイン視点で感じたこと ー
今回の人馬一体ミュージアムで感じたのは、デザインする対象は、「物」だけではない。
ということ。
クルマの形をデザインする。
操作をデザインする。
反応をデザインする。
人とクルマの関係をデザインする。
そして最終的に、
「楽しい」
「気持ちいい」
「もう少し運転したい」
という、人の感情までつくっていく。
優れたデザインは、
「これは使いやすい」
と考えさせる前に、
自然に身体が動いている。
ロードスターが長い間「人馬一体」という言葉を大切にしてきた理由も、そこにあるように感じた。
そして、その思想をクルマだけではなく、開発した人の志や、クルマ文化とともに残そうとしているのが、人馬一体ミュージアムなのだと思う。
人と物の間にある「気持ちいい」をつくる。
それもまた、デザインの仕事なのだと改めて感じた。
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