見えないものを、デザインする >
瀬戸内市立美術館で開催されている「小松宏誠展 光と影のモビール 海がのぼる空がふる」へ。


今回の展示で主役となっているのは、モビール。
風、光、影、雨、海。
普段そこにあっても、形として捉えることのできないものが、作品を通して見えるようになっていた。


ー 風は、見ることができない。 ー
風そのものを見ることはできない。
しかし、木の葉が揺れると、「風が吹いている」と分かる。
軽やかな羽根がわずかな空気の流れを受け、ゆっくりと動く。
その動きを見ていると、それまで意識していなかった空気の存在が突然見えてくる。
デザインの視点から見ると、ここがとても面白い。
形をつくっているようで、実は形のないものを見せている。
ー 400個以上の動きが「雨」になる。 ー
印象的だった作品のひとつが「雨のうた」。
400個以上のモーターによって、小さな動きが次々と生まれていく。
一つだけを見れば、単純な動き。
しかし、それが何百個も集まると、まったく違うものに見えてくる。

水面に落ちた雨。広がっていく波紋。
不規則に続いていく自然現象。
実際に水があるわけでも、雨が降っているわけでもない。
頭の中では「雨」や「波紋」という風景が生まれる。
ー 「海」を作らず、海を感じさせる。 ー
そして圧倒されるのが、大規模インスタレーション「海のモビール」。
一つひとつを見ると、抽象的な造形。

魚をリアルに再現しているわけではない。
海の映像を映しているわけでもない。
それなのに、空間全体を見ると、
海の中から魚の群れを見上げているようにも感じる。
ここには、デザインの大きなヒントがある。
海を表現するために、青くする必要はない。
魚を描く必要もない。波を作る必要もない。
「海らしいもの」を足していくのではなく、「海を感じる要素」だけを抽出する。
それだけで、人間の想像力が残りを補ってくれる。
ー すべてを作らないから、想像が始まる。 ー
デザインでは、つい「分かりやすく伝えよう」として情報を足してしまう。
海なら青。雨なら水滴。空なら雲。
しかし、これららの作品は直接的な表現をできるだけ使わず、
揺れ。反射。影。リズム。空気。
といった要素だけを残している。
だから見る人は、
「鳥みたい。」「魚の群れみたい。」「雨みたい。」
と、自分の経験を使って作品を完成させる。
想像する余白が残されている。
これも、人を作品の前に留まらせる理由なのかもしれない。
そんな感覚をデザインする方法を体験できる展覧会だった。
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